手話

難聴児の認知・言語の発達(4)手話には言語獲得装置がある!?~「語彙爆発」のしくみ

 前回、「ものに名前があることがわかる」ことが本来の言語獲得だと書きました。そしてそれは、「同じ」という観点で世界を切り分け(分類・カテゴリー化)、そのくくられたまとまり(=カテゴリー)に対して名前をつけるということを意味していました(例:...
手話

難聴児の認知と言語の発達(5)1語文から2語文へ~複数のことを関係づける力の発達

1歳代のことばは、まず単語でいいたいことを表現する一語文に始まり、1歳後半になってくると、獲得する単語(手話)が急激に増えてきて(「語彙爆発」)、単語だけであらわしていた一語文から、徐々に二語文に移行していきます。今回はその発達の過程につい...
当事者・本人(メッセージ・体験談・作文)

一側性難聴は、どんなときに困るのか?

 一側性難聴は、500人~1000人に一人という比較的高い頻度で起こると言われており、確かに新スクが普及するにつれて聾学校等に相談に来られる方も増えてきました。また、おたふくかぜの後遺症として起こる場合もあり、これを「ムンプス難聴」と呼んで...
絵日記、日記・作文

日記の書き方~低学年の日記指導

 きこえない子は、将来、きこえる人が多数を占める社会の中で生きていかなければなりません。その時に、自分のこと(障害を含め)を適切に周りに伝え、とくに障害への理解を得ていくことが大切です。そのために必要な力は、ものごとを深く見つめ、論理的に思...
絵本

きこえない子への絵本の読み聞かせ方

 きこえない赤ちゃんも1歳近くなると、上左図のように写真や絵を見て自分の経験を思い出すことができるようになります(象徴機能の発達)。また、この頃には、ママ(大人)が指さしたものを見たり、自分が見つけたもの・関心のあるものをママに知らせたりな...
日本語文法指導

助詞の指導(1)~助詞理解度の評価・助詞テストを使ってみよう!

実態の把握 子どもが助詞をどの程度理解しているか、その把握はとても重要です。子どもの今持っている力がつかめないと、どこからどのように指導を進めるか指導の計画が作れません。また、指導したのちどれだけ伸びたかも測ることができません。そこで、実態...
日本語文法指導

助詞の指導(2)~助詞「が」の指導方法

日本語の文には、基本的な文の型が5つあると言われています(上図)。これらの文型に使われている要素を「必須成分」と言います。使われている助詞は「が、を、に、で、と」の5つ。これらの助詞は、私たちが何かを言いたい・伝えたいと文を作るとき、必ず使...
日本語文法指導

助詞の指導(3)~助詞「が・を」の指導方法

 先に述べた基本文型のうち「が」と「を」を使うかたち(第2文型)の指導になりますが、この文型は、助詞「が」のみを使う第1文型とならんで使用頻度の高い文型で、幼児の絵日記とくに年少の頃、この文型は「動作動詞」と共に多用されています(絵日記では...
日本語文法指導

助詞の指導(4)~助詞「に・で・を」の指導方法

 前回までに助詞「が」、「が」と「を」の指導法について説明しました。ここからは「手話」と関連付けた指導法になります。ということは、手話を使わない聴覚口話法の立場からは想像できない指導法ということになります。聴覚口話法は自然法なアプローチを基...
日本語文法指導

助詞の指導(5)~助詞「と」の指導方法

助詞「と」の指導  助詞「と」には、いわゆる格助詞と接続助詞の二つの種類があります。接続助詞というのは、「春が来ると、花が咲く」などのように、単文と単文をつなぐときに使われ、「~が来ると」のように動詞基本形+「と」のかたちで使われます。ここ...
視覚教材

体験したこと、「ことば絵じてん」にしてみませんか?~きこえない子のための″語彙辞書″の作り方

 子どものことばの概念を拡げるために「ことば絵じてん」が有効だということが、最近だんだんと理解されるようになってきました。そうすると保護者の方からもいろいろな質問が出てきます。「ことば絵じてんって市販されていますが、それではだめなんでしょう...
国語教科書

「おとなになれなかった弟たちに・・」中1年国語~過去形と現在形の巧みな使い方

 8月といえば、昭和の頃に子ども時代を過ごした私にとっては「広島・長崎に原爆が投下された夏」であり「終戦の夏」です。 太平洋戦争が終わってすでに80年近い歳月が流れていますが、それでも戦争中の出来事を扱った文学作品が読み継がれ、国語教科書に...
実践の記録

「将来の夢はろう学校の先生」~重度難聴のS子との3年半の記録(難聴学級)

「重度難聴のS子さんが入学します。立ち上げの難聴学級担任をお願いします。」20××年3月、突如、難聴学級担任と告げられた私は、聴覚障害について何も知らないまま、その後わずか数日で難聴学級担任としての生活がスタートした。 4月に入って入学式を...
絵日記、日記・作文

発達に沿った絵日記の描き方

  今回は、子どもの発達にそった絵日記の描き方について紹介します。絵日記はなんのために描くの?親子のコミュニケーションの材料 子どもの経験したことで目を輝かしていたこと、心を動かしたことに共感してあげましょう。そしてそのことについて会話し話...
人工内耳

人工内耳~医師から保護者へのアドバイス(1)~これから人工内耳を考えておられる方へ

 以下の記事は人工内耳をどうしようかと迷っている保護者の方への医師からの貴重なアドバイスです。『ようこそ聞こえない赤ちゃん』(福岡県立久留米聴覚特別支援学校2021発行)に掲載された論稿を発行者の許可を得て掲載いたします。原題は「人工内耳の...
人工内耳

人工内耳~医師から保護者へのアドバイス(2)

  以下の記事は人工内耳をするにあたって「2歳までにした方がよいのか?」「手話は使わない方がよいのか?」と迷っている保護者の方への医師からの貴重なアドバイスです。『手話で育つ豊かな世界』(全国早期支援研究協議会,2020発行)に掲載された、...
視覚教材

乳幼児期の「写真カード」の作り方と使い方

実物の代理物(Symbol)のある便利さ 赤ちゃんは生後6か月を過ぎると、だんだんと経験したことを記憶(イメージ)できるようになってきます。ママのことや自分の家の中のことをよく覚えているので、人見知りや場所見知りが出たり(8カ月頃)、また、...
発達の診断と評価

難聴児の日本語力評価に使う簡便な検査は?

 難聴幼児・児童の支援・指導においてまず最初にやることは、子どもの発達を客観的に把握し、課題を明確にして対応を考えることです。その見方として、日本語の面だけをみるのか、認知や思考と言語との関連でみるのか、二つの見方がありますが、ここでは、日...
あそび・教材

家族みんなでボードゲームを楽しもう!

子どもを引き付けるスマホゲーム、ネット動画etc.  先日、ある聾学校幼稚部で、家庭での「生活・学習アンケート調査」を実施しました。そこから浮かび上がってきた子どもたちの姿は、「ビデオやYouTube動画、スマホやタブレットなどの電子機器ゲ...
当事者・本人(メッセージ・体験談・作文)

【講演記録】難聴者として生きる~「隠し続けた心」の開放~

ある程度の聴力が残っており「聞こえて、話せる」軽度難聴の人は、自分が「聞こえにくい人」ということを自覚することがかえって難しく、ちょっとしたコミュニケーションのずれから周りとトラブルになったり、自分だけ知らなくて恥ずかしい思いをすることもし...
手話

難聴児の認知と言語の発達(6)手話からスタートして日本語はいつ頃どのように獲得されるか?

手話からスタートした難聴児は1歳半から2歳頃に、述部を構成する動詞や形容詞の語彙を獲得し文を構成する統語構造を身につけて二語文が生成できるようになります。その認知的基盤になっているのが二つのことを関係づける力の発達と考えられますが、このよう...
新生児聴覚スクリーニング

新生児聴覚スクリーニングってどんな検査?

この検査は、赤ちゃんが生後2日目頃から退院までに行う検査で、眠っている赤ちゃんに40デシベル前後のささやき声程度の音をきかせ、その反応を調べる検査です。検査にかかる時間は数分から10分程度で、結果をコンピュータが判断して「パス(反応あり)」...
新生児聴覚スクリーニング

新スク後の子どもの成長~進路の異なる3事例から

新生児聴覚スクリーニング検査(以下、新スク)後の相談支援の状況は、地域によってまちまちです。多くの地域では、確定診断がなされるまでは病院や公的機関からの積極的な支援はなく、担当の保健師さんなどに、自分から相談してみてはじめて相談が開始される...
聴力測定・聴覚活用

「聴きたい」気持ちを育てるには?~乳幼児期の聴覚活用

聴能訓練から聴覚学習へ 子ども達との遊びの中で、すべり台を滑る時に「ヨーイ ドン!」とか、お菓子が入った箱をあける時に「1,2の3!」等、合図のことばを使う場面がたくさんあるかと思います。手や指の動きと合わせてきこえてくる声、それに注目する...
子どもとの関わり方

子どもを伸ばす関わり方~インリアル・アプローチ

 ことばの力を伸ばしたい。そのためには子どもと丁寧なやりとり(コミュニケーション)する時間が必要。とはいっても仕事をしているし、なかなかじっくり関わる時間がとれない。ではどんな工夫をすればよいのでしょう? ここでは、共働きの親御さんが、お子...
実践の記録

はじめての受動文~聾学校小2の実践(「どうぶつ園のじゅうい」より)

受動文は、なぜ、難しいか? きこえない子の苦手な構文(文法事項)に、①受動文(する、される)、②使役文(させる、させられる)、③授受文(あげる、もらう、くれる)などがあります。これらの構文の特徴は、いずれも、複数の人が存在し、それら複数の人...
出版案内

「リファー(要再検査)」となったお子さんのお母さんと家族の方へ

 「わが手に抱いた赤ちゃんの耳が聞こえていないかもしれないと言われた時、深い不安と混乱の中に突き落とされた。子どもにどう接したらいいのか、ガラガラを振ってみても子守唄を歌ってみても、この子には届いていないのかもしれないという疑心暗鬼に襲われ...
出版案内

「きこえない!」でも、大丈夫!

「残念ながらお子さんはきこえていません・・・」 確定診断で「断崖から突き落とされる思い」「目の前が真っ暗になった」と語られるご両親は少なくありません。でも、「大丈夫!きこえないことは決して不幸なことではありませんよ。」そう語りかけるのはきこ...
軽・中等度難聴,一側性難聴

新版・きこえにくいお子さんのために

 「きこえているから大丈夫」。軽・中度難聴児はいつもそのようなまなざしと期待の中で生きている。周りの人たちにとっては励ましの意味もあろうが、本人にとっては時としてそれが重荷として感じられることもある。彼らの現実のきこえは、「きこえる、きこえ...
出版案内

どうすればことばが育つか?~「9歳の壁」を越えるために

 きこえる子ときこえない子の差は、「聞きかじったり」「小耳にはさんだり」して「耳学問」ができるかどうかです。きこえない子は耳からの情報が入らない分どうしてもことばや知識が限られるので、努力と工夫が必要です。 では、どんな工夫があるのでしょう...
出版案内

難聴児はどんなことで困るのか?

 補聴器の性能の向上や人工内耳の普及に伴って、軽度・中等度難聴児だけでなく、高度難聴児も普通校・園に通う幼児・児童が増えてきています。しかし、不登校などの心理的不適応を起こす子ども、目立った不適応行動は示さなくとも、毎日ただ机に座っているだ...
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難聴理解かるた

 難聴という障害は周りの人には理解されにくい障害です。見た目では障害があるということがわかりません。補聴器(人工内耳)をつければ、眼鏡みたいにはっきりきこえるようになると思わたり、喋ることができてそれを相手が聞き取れれば、「なんだ、きこえて...
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聴こえない・聴こえにくい子どもの理解のために

「乳幼児相談に訪れる保護者の大半はきこえる人で、長い間、きこえる世界のみで生きてきた人たちである。そうした人々が、ある日突然、「お子さんはきこえない」と言われてとまどい、不安と絶望の中で、さまざまな思いや考えに心を揺さぶられることは当然のこ...
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手話で育つ豊かな世界~その子らしさを実現する支援・教育を求めて

 この書籍は、発達の早期から手話を積極的に使ってきたろう学校の在校生・卒業生、その保護者44人と、その支援・教育に関わってきた聾者・教員・ST・研究者など17名の計61名によって書かれた実践の記録・報告・論文集であり、手話をテーマにして書か...
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ボードゲームであそぼう!

 この冊子は、手話通訳士でもあり臨床心理士でもある井料みき子さん(北九州市在住)によって書かれたきこえない子のためのボードゲーム入門書です。 なぜ、きこえない子のための? ボードゲームの中には、声を出して宣言したり、答えを言うゲームがありま...
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たのしいゆびもじ(大型版・小型パウチ版)

 この「たのしいゆびもじ」(指文字清音50音表)には、①B3サイズ(縦36cm横51cm)の大型指文字表2枚組セットと、②A4サイズ(縦21cm横30cm)の小型指文字表・両面ラミネート加工・パウチ版とあります。 B3サイズの大型版は「自分...
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小1漢字手話表

*漢字は小学生になってから覚えればよい、というのが一般的な考え方ですが、考えてみれば中国の子どもたちは最初から漢字を使っているわけですから、そんなにこだわる必要はないでしょう。 漢字は、手話と同様に意味が伴っているのでことばを覚える手掛かり...
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親子の手話じてん

 『わかる!できる!おやこ手話じてん』(旧版)が出版されてから十数年経ちました。この辞典は使いやすいことで読者の皆様方より高い評価をいただき、これまでに何度か改訂を重ねてきました。 この間、手話に対する社会的認知も広がり、ニュースに手話通訳...
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パパといっしょにハッピーサイン~手話で子育てしよう

 この本は単なる手話入門書ではありません。聞こえない子を持つお父さんは、手話通訳者のように流暢に手話ができなくても、わが子とコミュニケーションができればいいのです。単に手話単語や手話文を学ぶだけでなく、お父さんがどのように子どもに向き合えば...
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おやこ手話じてんDVD(2枚組)

  「じてんのイラストだけでは、動きがよくわからない。DVDを作ってほしい」という読者の方からの要望があり作りました。デフ・ファミリー家族の3人の方にモデルになっていただきました。ろう者のご主人、聴者で手話通訳士のお母さん、そして難聴者の娘...
出版案内

おやこ手話じてんイラストCD

『おやこ手話じてん』に掲載された全1317語の3,000枚以上のイラストが、テキストや問題作成等に使用できます。(但し商用不可)辞典自体はすでに改訂されており、掲載語彙数も50語近く増えていますが、このCDは改訂していないため、価格を当初の...
出版案内

きこえない子のための新・日本語チャレンジ!

 この本は、日本語の読み書きに苦手感をもつきこえない子のために作られた日本語学習テキストです。きこえない子の読み書きの課題は、語彙の少なさと文法力の弱さとくに動詞・形容詞の活用と助詞の習得に課題がみられます。 このテキストは、これまでの外国...
出版案内

ことばのネットワークづくり(別冊解説書付・R4,5年度文科省特別支援教育一般図書採用)

 このワークブックは幼児・児童向けの語彙の習得・拡充をめざしたワークです。「どっちのなかま?」「ここはどこ?」「どこが似ているの?」「どっちにも入るのは?」など13の項目に分けて120枚のワーク(半分はCDに掲載)から成っています。では、な...
動詞

絵でわかる動詞の学習

 このワークブックは、日本語のベースになっている動詞の語彙の拡充と多様な活用を学習するためのテキストです。日本語では、話者が最も伝えたいことは文末に来ますが、文末に最も多く来るのが動詞です。ですから動詞の語彙が少なかったり、活用の仕方をしら...
YouTube日本語講座

YouTube日本語講座・全33回プログラム一覧

 きこえない子どもたちの中には、動詞・形容詞の活用や助詞の使い方など文法面で課題をもっている子がいます。そうした文法面での苦手さが、日本語の文が読めない書けないことにつながっています。 では、このような文法力につまずきがみられる子どもたちの...
YouTube日本語講座

第1回 日本語のパーツ(9分)

今回の学習内容 さまざまな機械がたくさんのパーツ(部品)から作られているように、日本語もいろいろなパーツから作られています。 まずいちばん小さなパーツは「文字」です。日本語は清音、濁音(点々のついた文字)、半濁音(〇がついた文字)、拗音(小...
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第2回 品詞の分類(15分)

今回の学習内容 単語は、品詞に分けることができます。文法指導の初期段階では、「時数詞」「名詞」「動詞」「形容詞」「助詞」「(助動詞の)です」の6つを取り上げます。この中で、「時数詞」というのは「江副文法」(新宿日本語学校長江副隆秀氏の考案さ...
YouTube日本語講座

第3回 時数詞(13分)

 今回の学習内容 前回、基本的な品詞として、「時数詞」「名詞」「動詞」「形容詞」「助詞」「(助動詞の)です」の6つを紹介しました。ここからはそれぞれの品詞をひと通り学習していきます。時数詞は、江副文法による分け方で、時間、数、量をあらわす品...
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第4回 名詞(9分)

今回の学習内容 今回は、名詞について学習します。名詞は、人、場所、もの、生き物、事柄などの名前を表し、疑問詞としては、「だれ」「どこ」「なに」が対応しています。また、品詞カードは、黄色い四角形です。 また、名詞は、共通の性質をもったもの(こ...
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第5回 動詞・その1(13分)

 今回の学習内容 今回と次回は「動詞」について学習します。動詞は、きこえない子の苦手なもののひとつです。理由はいくつかあります。まず、動詞は事物名詞のように、そこにあるのが見えて区別することができることばとは違います。例えば「テレビの上にス...