難聴児の日本語力評価に使う簡便な検査は?

発達の診断と評価
この記事は約4分で読めます。

 難聴幼児・児童の支援・指導においてまず最初にやることは、子どもの発達を客観的に把握し、課題を明確にして対応を考えることです。その見方として、日本語の面だけをみるのか、認知や思考と言語との関連でみるのか、二つの見方がありますが、ここでは、日本語の語彙・文法・読解を測定・評価する検査について、比較的、使いやすい検査について紹介します。

絵画語彙発達検査 3歳~12歳

 語彙の習得度を測定します。適用年齢は幼児・年少から小6あたりまでをカバーできます。4枚の図の中から指定された単語を指差しで応えるだけの簡単な検査で10~15分程度でできます。

 同じ絵について、異なる単語で問う問題もあり(例えば、飛行機の絵について「飛ぶ」「飛行機」「乗り物」など異なる語で質問する)、その単語の絵(=飛行機)について、子どもがもっている概念をみることもできます。また、図版1~3の18問題のうち上位概念を問う問題が6問あり、難聴児が上位概念のことばをどの程度習得しているかがわかります。
 図版は15枚ありますが、図版6(8~10歳開始図版)あたりから図版15までは抽象語彙(いわゆる熟語「輸送」「温暖」「冷却」など)が多く、抽象語彙をどの程度習得しているかもわかりますから、この検査で幼児期から小学校高学年までの語彙力はだいたい測定できます。
 この検査は聾学校でも幼稚部・小学部あたりでよく用いられていますが、日常的に頻度多く用いられる語は比較的少ないので(しかし聴児は知っている)、語彙年齢は5~6歳の難聴幼児でも3歳レベルといった厳しめの評価になりがちです。
 
 結果は語彙年齢と評価点で示され、評価点の基準は以下のようになっています。

  

評価点評価
1~5明らかな遅れがみられる
6~8平均より下
9~11平均
12~14平均より上
15~19平均より明らかに高い

J.coss(日本語理解力検査) 3歳~

 文法力を測る検査です。文を自分で読んで理解するためには、語彙力の次に文法力が不可欠です。どの程度の文法力があるのか比較的簡単に調べることができる検査です。適用年齢は、幼児3歳から小4あたりまでの日本語文法力をカバーできますが、とくに年齢範囲は決まっていません。4枚の図の中から指定された単語の絵を指差しで応えるだけの簡単な検査で10~15分程度でできます。

結果は、まず、通過項目数によって、難聴児が聴児の何歳(何年生)くらいの力があるのかみることができます。難聴児の場合は、一般的に語彙力も聴児と比較して弱い傾向がありますが、年長幼児なら小学校就学頃に7項目以上通過していれば、小学校1年生の教科書を自分で読んで理解する力があると考えてよいでしょう。
また、項目別に回答内容を分析することで、その子どもがどのように文を理解しているかがわかります。一般的に難聴児は、助詞が十分に理解習得できていないことが多く、助詞抜きで、知っている単語だけを手掛かりにイメージを描いていることが多いです。そうした答え方・思考の仕方の特徴を分析することで、指導の手掛かりがつかめます。

ReadingーTest(読書力診断検査) 小1年~小6年

 この検査は、「読字力(=音韻、漢字)、語彙力、文法力、読解力」の4つの下位テストからなっており、いわゆる言語の4分野について測定しているといえます。小学校低学年用、中学年用、高学年用の3種があり、それぞれ教科書に対応した内容で問題が作られています。

 聾学校では、1970年代からこの検査を使っており、内容を改訂しながら半世紀以上ものあいだ使われてきた歴史があります。上の図は、ほぼ10年ごとに調査された、学年ごとの難聴児童の平均「読書年齢」ですが、4年から6年までのどの学年でも、1970年から2015年までのあいだ、「読書年齢」が該当の学年に到達していません。これがいわゆる「9歳の壁」といわれる現象です。

 Reading-Testの検査結果は、「読字力」「語彙力」「文法力」「読解力」「読書力(全体)」ごとにそれぞれ5段階評価で示されます。また、「読書力(全体)」は「読書力偏差値」「読書学年」でも示されます。

学力検査 小1年~小6年

 そのほか、上図のような相対評価法に基づく「教研式NRT(Norm Referenced Test)」や絶対評価法に基づく「教研式CRT(Criterion Referenced Test)」などの学力テストなどがあり、これらは、日本語力というより教科学習としての国語の学力を測定するときに用いられます。
 さらにこれらのテストには、国語だけでなく、算数、理科、社会、英語(5,6年)などのテストもあります。

タイトルとURLをコピーしました