きこえない子への絵本の読み聞かせ方

絵本
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 きこえない赤ちゃんも1歳近くなると、上左図のように写真や絵を見て自分の経験を思い出すことができるようになります(象徴機能の発達)。また、この頃には、ママ(大人)が指さしたものを見たり、自分が見つけたもの・関心のあるものをママに知らせたりなど、指さしを通して自分とものとママ(大人)で、経験を共有することがふつうはできるようになる(共同注意・三項関係の成立)のですが、きこえない赤ちゃんは、象徴機能の発達という点で問題はなくとも、「共同注意・三項関係の成立」という点で難しさがあることが多いので(音声で「〇〇だね~」と赤ちゃんと共有することが難しい)、赤ちゃんと目線を合わせることと赤ちゃんが興味・関心をもったものへこちらが関心を合わせていくという配慮が必要です。こうした配慮をしてママと赤ちゃんとの関係ができてくると、絵本を一緒に楽しむことができるようになります。とは言っても、きこえないことには変わりがないので、下左図のような位置関係で絵本を楽しむことは難しく、下右図のようなどちらかといえば紙芝居を読むようなスタイルに近い位置関係が必要になります。では、ほかにどんなことに注意が必要でしょうか? 今回はきこえない子に絵本を読み聞かせるときの配慮・注意点についてお話ししします。
 

読み聞かせの場面の設定の仕方

子どもが、絵本も大人も同時に見れる位置どりをとって座ります。

 絵と大人の顔(表情・口形)と手話が同時に見れる位置どりが大切です。また、絵本との距離、話す大人の後ろに目障りな物がないか、子どもの目に強い光が当たっていないかなど、絵本を読むための環境への配慮も忘れないようにしましょう。

子どもが絵を見る時間をたっぷり確保します。

 子どもが絵を見ているときは、大人は邪魔をしないで待ち(子どもが何に関心を示しているのかよく観察する)、大人に顔を向けるタイミングを待ちましょう。

子どもが顔を上げた時、子どもの見ていた絵について話します。

 子どもが興味関心を向け、じっと見ていたものや指差しをして同意を求めたりした時、それについて共感したことばを投げかける。「大きいぞうさんだね!」「コロコロコロって行っちゃったね」など。
話のすじから逸れてもかまいません。子どもが、今、関心をもったことを大切にしましょう。

 以上のような基本的なことを理解した上で、読み聞かせをしていくのですが、大人は、絵本に書かれている文をたんたんと読んでしまう傾向があります。絵本の作者のメッセージを忠実に伝えるよりも、まずは子どもの興味関心を大切にし、絵本を介して子どもと楽しくコミュニケーションすることを大切にすることです。そのための工夫をいくつか紹介します。

読み聞かせの工夫

文章にしばられないで、本の中身をふくらませる

 子どもが関心を示したところをふくらませる。読みながら子どもと話し合ったり問いかけたりする。子どもの経験と結びつけるなど。話の筋からそれてもそれはそれでよい。

次の場面を予想させる。

 「次は誰が来るかな?」「どうなるのかなあ?」など問いかけながら、ページをめくる。

読みながら身振りで演じたり、声色や表情を変えたりする。

 手話がわからないときはジェスチャーをしたり絵を指すなど臨機応変に。わからなかった手話はあとできけばよい。

子どもに催促されたらできる限り何度でも読む。

 子どもは楽しかったことはまたやりたがるもの。繰り返すことで、子どもはことば(手話・日本語)や想像力・創造力(イメージ)を確かなものにしていきます。

読み終わったら、再現あそび(劇遊び)をする。

 適当に道具を工夫したり、何かに見立てて再現あそび(劇遊び)をする。子どもは絵本のストーリーを再現することで、表現力や想像力を豊かにする。また、子どもが自分で考えてストーリーを発展させていくこともできます。
 
 以上のようなきこえない子への読み聞かせ方の基本を理解して読み聞かせをしましょう。絵本を好きになった子は必ず読み書きや考える力・イメージする力も伸びます。ぜひ家族みんなで絵本の読み聞かせを楽しんでください。以下に保護者育児記録から拾った絵本の読み聞かせの事例をいくつか紹介します。

絵本の読み聞かせ、こんなふうにやってます!

事例1 0歳10か月「バナナ」  実物ー絵ーことば(手話)のマッチング

 いつもは絵本のバナナの絵と実物を見せて「バナナ」の手話をしてからバナナを食べる。しかし、今日は何もないところから手話だけで「バナナ」をしてみたら、じーっとかたまって何やら考えている。そこで実物のバナナを冷蔵庫から出すと少しニヤリ。M「じゃじゃーん、これだよ!」と実物を見せると大喜び。触ったり、皮ごとかんでいる。食べる前に絵本と実物を何度も見比べる。そして「甘いね」「黄色いね」「バナナだよ」などと話しかけながら一緒に食べた。

事例2 0歳10か月「ペープサート」  ちょっとした小道具

 ノンタンの絵本のペープサートを夫が作ってくれたので、今日はそれを使って絵本を読んでみた。ぶたさんとノンタンが「ごっつんこをして、いたたた」のシーンがお気に入りで、何度が繰り返すとよく見て笑ってくれた。目で見てわかりやすい方法って大事だなと思った。

事例3 0歳11か月「どっちがいい?」 写真カード、小道具

 寝る前に絵本を読む習慣もだいぶ定着してきた。今日はCにどちらがいいか選ばせてみた。『ゆめにこにこ』と『じゃあじゃあびりびり』と並べてM[どっちがいい?」ときくと、『じゃあじゃあ・・』を選んだ。この絵本には踏切が出てくるのだが、M「踏切だ~。赤ピカピカだね~」などと言って「踏切」の写真カードを見せるとにやりと笑う。
『じゃあじゃあ・・』と『いないいないばあ』を並べてM[どっちがいい?」と聞くと『いないいないばあ』を選ぶ。犬、猫、怪獣・・と続き、最後のお母さんの場面では絵本がお面になるのだが、お面の中の私の目を見つけると笑う。この絵本のよいところは、Cの目の動きがよくわかること。絵の隅々の絵をよ~く見ている。これからも寝る前のゴールデンタイムを大切にしたい。

事例4(2歳6か月)「わたしはだれ?」 ペープサート

 今日の絵本は0~2歳児の絵本『だれかしら』。本を読む前にベッドで、動物指人形でうさぎさんねんね、ぞうさんねんね…などやっていました。本もちょうど動物がいろんな物陰から隠れてからだの一部を覗かせて何の動物だろうと考える繰り返し。表紙から始まります。「C、これ誰?」ときくと、んー~と考えているのか、考えていないのか。そこで、動物指人形を本の後ろに隠し、うさぎさんの耳、象さんの鼻、しまうまの大きな鼻などを本から覗かせ、「C、これ誰?」ときくと「うさぎ」「しまうま」と体全体で答えてくれました。最後は…ママ、ママが本で顔を隠し「C、私はだれ?」ときくと、ケタケタ笑い出しました。これでようやく面白さがわかったようで、1頁ずつ丁寧に、「これ何だろう?」「うさぎさんかな?」とか、「わにさんだね~」「これはうさぎじゃないね」と楽しく読むことができました。

参考になる記事

★発達に沿った絵日記の描き方
https://nanchosien.blog/how-to-write-diary/#dialy

☆乳幼児期の写真カードの使い方
https://nanchosien.blog/photo-card/#photocard 

★体験したこと、「ことば絵じてん」にしてみませんか?
https://nanchosien.blog/word-picture-book/#wordpicturebook

 

参考になるYouTube動画

【手話で読み聞かせ】読み聞かせのコツ(字幕なし・NPO法人しゅわえもん動画サイトより)

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