難聴児の認知・言語の発達(2)0~1歳代の関わり方のポイント5選

新生児聴覚スクリーニング・乳幼児教育相談
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 ことばが獲得されるために大切なこととして、親子の愛着関係の成立(社会的相互作用)と象徴機能の発達という二つのことがありますが、難聴児においては、前者の愛着関係を築くことの難しさがしばしば指摘されてきました(野中2006など)。それはきこえないがゆえに起こってくることなのですが、ではどんな工夫が大切なのか、ここでは、難聴幼児を育てた保護者12名の手記から引用するかたちで、5つの配慮・工夫について書きたいと思います。

目と目を合わせてコミュニケーション~目が合った一瞬を大切に!

 ほとんどの方が目と目を合わせることの大切さと難しさを語っています。聴者は音声での会話が当たり前のことになっていますから、半ば無意識に声で赤ちゃんに働きかけます。しかし音声言語を子どもの耳元でつぶやいても子どもには伝わりません。手話(ことば)や写真を見せつつ、同時に対象のものを二人で共有することの難しさ。指差した先が子どもの見ているものと一致しているとも限りません。と言ってあきらめず、子どもとの関係を粘り強く築いていくことが、親子の共感関係をつくることにつながっていきます。以下、手記の中から具体的に引用してみます。

2.子どもの興味関心に合わせて~子どもの興味を一緒に楽しもう!

 子どもは自分の興味あることに夢中になっているとき、脳も活発に働きさまざまなイメージを浮かべ思考しています。そしてそのことが想像・創造といった豊かにイメージする力や深く考える力、物事に積極的に取り組む力などを伸ばします。子どもが遊べる環境を整え、大人も一緒になってそこに参加していくことは、さらに子どもの遊びを発展させさまざまな力を伸ばすことにつながります。

スキンシップ、笑顔、オーバーアクションで気持ちを伝える

 子どもにはっきりと感情が伝わるよう、とくに愛情表現は思いっきりハグするなどスキンシップで伝えるようにしている方が多いです。愛されていることを実感できることは、子どもは「自分は愛されている」「自分はこのままの自分でいいんだ」という自己肯定感を高めることにつながると思います。

全てのプロセスを見せる!生活のルーティーン化、場を離れるときは事前に話す

 例えば聴児であれば、親が子どもの視界から消えても、近くで親が何かしている音がきこえていれば安心して待つことができます。しかし聴こえない子にとっては視界から予告なしに親が消えることは、「突然ママがいなくなった」のと同じです。そうした不安を抱かせないよう、事前に説明することが大事にされています。 
 また、行動や生活の全過程を可能な限り見せることは、子どもが不安にならないだけでなく、物事を関係の広がりの中でとらえ、それらの物事の意味や概念を広げたり次のプロセスを予想できる力を高めます。 

写真カードや手話などの視覚的手段・視覚言語を使う

 乳児期の後半になると子どもは自分が体験したことを記憶し、イメージを浮かべることができるようになります。この頃から「写真カード」が使えるようになります。また、言語が獲得されるためにはこの認知的な基盤の発達と、親子関係の中でお互いにモノ・コトが共有できること(三項関係)が必要かつ大事なことです。しかし、この互いに経験を共有し共感するということがきこえる子ほどすんなりとはいきません。そのための練習や努力、工夫が必要になります。

心を育てる~「非認知能力」もしっかりと伸ばしたい!

 これまでの日本の教育は、どちらかといえば認知・学力を重視してきたと思います。もちろんこれはこれで大切なことは言うまでもないのですが、地球規模で起こる様々な難題、10年先が見通せない「不確実な時代」ということを考えると、単に「頭がよい、勉強ができる」だけではやっていけない時代になってきているのも確かです。そこで協調されるようになってきたのが、『非認知スキル』という考え方です。例えば「目標を達成する力」「他者と協同する力」「感情をコントロールする力」といった、学力とか知能などの数値化できる『認知スキル』と違って、数値化はできないけれどみんなで協力して生きていくときにはとても大切な力です。日本には昔から「知情意」ということばがありますが、「知」に対して「情意」に関わる力でしょうか。きこえない子どもたちも、赤ちゃんの時から、この両面をしっかりと伸ばしていきたいですね。

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