「ドアがあける?ドアがあく?」~手話を活用した自動詞・他動詞の学習

手話
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  動詞には自動詞と他動詞という二つの種類があります。例えば「あく」と「あける」。よく似ているのでどっちがどっちか難聴児はしばしば混乱します。まず二つの動詞の性質の違いについて学ぶことから始めましょう。そのときに、手話の文法を使って体ごと覚えるのが効果的です。今回はその方法について解説します。

自動詞と他動詞

自動詞の文型と他動詞の文型

 他動詞は、そのものを動かす動きについて使う動詞です。例えば、「あける、しめる、まわす」などです。これらは「~が~を+他動詞」のかたちで使います。必ず、それを動かす主体(主語・動作主)とその対象となる語が必要です。文型としては基本文型Ⅱです。
 自動詞は、そのものの動きについて言うときに使う動詞です。例えば、「あく、しまる、まわる」などです。これらは「~が+自動詞」のかたちで使います。基本文型Ⅰなので助詞「~を」をとることは基本的にありませんが一部、以下のような例外があります。
 例えば「電車が トンネル 出る」「電車が トンネル 通る」などです。「出る」「通る」はいずれも自動詞ですから、本来は助詞「を」を使わないはずですが、「出発点の『を』」と「通過の『を』」の場合は使うことができます。自動詞ですが基本文型Ⅱのかたちで使います。場所に関わる助詞「を」の使い方は、本HPの助詞の指導(4)~助詞「に・で・を」の指導方法を参考にして下さい。

手話による自動詞・他動詞の使い分け

 自動詞と他動詞を区別するには手話の文法を使うと便利です。自動詞のときは、①そのモノの状態を表すCL表現(SASS・サス)をした後、②そのモノへの指さしをします。例えば「ドアが あく」の場合は、ドアが自然にあいていく様子をしたあと、ドアに指差しをします。
 他動詞のときは、①そのモノを操作する様子を表すCL表現(Handle)と、②主語(動作主)に指さしをします。「ぼくが ドアを あける」なら、取っ手を持ってドアをあける仕草をしたあと、ぼく(私)を指さします。
 SASSとHandleのわかりやすい例は「車」の手話表現。親指と四指を向かい合わせて車のかたちを作り前に動かす「車」の手話がSASS、自分が車のハンドルを握って運転している様子で「車」を表現するのがHandleです。 

 では、少し手話表現の練習をしてみましょう。上図の例題は、①「きこえるときく」、②「こぼれるとこぼす」、③「あがるとあげる」です。①「音楽がきこえる」は、音楽がきこえてくる様子を身振り表現(CL表現)で表し、きこえてくる方向(音楽)を指さします。「音楽をきく」は音楽、聴いている、私(指さし)。ここでは自動詞と他動詞を区別する必要があるので必ず最後に指差しを入れます。

 では、少し前に戻って「電車が トンネルを 出る」「電車が トンネルを 通る」というのは「を」を使うのに自動詞と言いましたが、本当でしょうか? これも指さしを使ってやってみるとわかります。前者の例は、手話では「電車、トンネル、出る、(指さし・電車)」になり、電車に主語を示す指差しが入ります。後者では「電車、トンネル、通る、(指さし・電車)」になり、電車に主語を示す指差しが入ります。他動詞は何かを操作する対象が必要でしたが、ここでは操作する対象はありません。ですから「を」を使うけれども自動詞だということがわかります。

ペアになる自動詞と他動詞

 自動詞と他動詞の区別がわかったら、日本語の動詞のうちペアになっている自動詞・他動詞を探してみましょう。関連付けて覚えると覚えやすいものです。具体的にどんな動詞があるか、子どもと一緒に探してみるのもよいと思います。
 また、上図は『絵でわかる動詞の学習』の中の問題です。ペアになる動詞がイラスト付きの問題になっていますので子どもにわかりやすくおススメですので、このような問題も使って、自動詞と他動詞についての理解を深めましょう。 

参考になる記事・書籍

★HP記事 『助詞の指導4~助詞「に・で・を」の指導』https://nanchosien.blog/postposition-ni-de-o/#postposition-wo

☆『絵でわかる動詞の学習』 難聴児支援教材研究会 A4版 86頁 1,700円 https://nanchosien.blog/verb/#verbpicture
 

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