誤りのある文の直し方

日記・作文
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はじめに

  誤りのある文を直すとき、どのようにしていますか? 
「ここは間違っているよ。正しい文はこうだよ」と、訂正した正しい文を見せて、「このように直してみて。それを読んで覚えよう。今度は間違えないようにしようね」と模範の文を書かせて終わりにしていませんか? 間違いがなぜ間違いなのか、これで間違いの理由がわかるでしょうか? もちろん「否」です。間違っている「理由」がわからなければ、また同じ間違いを繰り返します。
 では、間違いの理由を説明できるでしょうか? それは、自分のほうが難しい。なぜなら、きこえる私たちは、日本語を、幼い時から音声言語を使った会話の中で”自然に”獲得してきたから。ですから、間違っているとすぐにわかっても。どこがおかしいのか説明してと言われても簡単には説明できない。「間違っているから間違っているんだよ」としか言えない。しかし、指導の方法はあるのです。今回はその方法について紹介します。上記のファイルは、重度聴覚障害成人の方、三人の自己紹介の文です。添削を依頼されたらどうやって添削すればよいでしょうか?

 以前に、日本語には5つの基本文型があることを紹介しました。日本語の文は、文の最後の述部(述語)を中心に、いくつかの成分(情報)から成り立っていて、それらの成分(情報)の中には、述部にとって欠かせない必須の成分があり、この必須成分と述部(述語)との組み合わせを基本文型と言いました。文を直すときは、この基本文型を使います。もちろん、この基本文型については、あらかじめ指導しておく必要があります。ということは、基本の文型が理解され習得されていれば、例文のような間違いは生じないということです。 
 その基本文型5つのうち、最も頻繁に使用される基本文型がⅠ~Ⅲです。誤りのある3つの例文もⅠ~Ⅲのうちのどれかが使われています。以下、例文の指導について考えてみましょう。

Aさんの文の直し方

 Aさんの文の誤りは、言いたいことが複数あって、それを一つの文の中で同時に言おうとしたために、文が混乱していることです。では、どのように直せばよいのでしょうか? 
 まず、一つの文で、最も大事な部分は文末の述部です。その人が言いたいことは、この述部にあるからです。この文の述部に注目すると、「卒業しました」という動詞が来ています。では、「卒業した」という動詞に必須の成分は何でしょうか? もしこの文を書いた人が「卒業しました」とだけ言ったとしたら、それを聞いた人は何というでしょう? おそらく「えっ? どこを?卒業したの?」でしょう。「卒業した」という述部には「どこを」という「対象」となる語が必要なのです。ということは、「~を」が必須の基本文型Ⅱを使うということになります。そうすると文は「 Aろう学校 卒業しました。」が正しい文になります。以下の基本文型Ⅱのかたちです。 

 しかし、Aさんには、もう一つ言いたいことがあります。それは「小学校1年生から高校3年まで」というところで、この部分は、そのAろう学校に小1から高3までの12年間通ったという意味でしょうから、述部は「通いました」となるでしょう。では、「通いました」に必要な必須の成分は何でしょうか? ここは、対象の「~を」ではなく、対象の「~にになります。「ろう学校 通いました」とは言わないからです。
 このようにまず、言いたいことを正しい基本文型で表現するように直し、そのうえで二つの言い方(単文)を一つの文(複文)にまとめる練習をします。例えば、「私は 小学校1年生から高校3年まで Aろう学校に通い、(Aろう学校を)卒業しました」。

Bさんの文の直し方

 上に示したBさんの文は、どう直せばよいでしょう? これにも二つの言いたいことがあるようです。一つは文末の述部「卒業しました」ということ、もう一つは「私の出身地は」ということです。前者については、すでにAさんのところで説明したので触れません。後者の「私の出身地は」という部分ですが、「私の出身地は」に続くのは「〇〇県です」などですから、下図の第1文型の述部が名詞になるかたちです。このかたちを使って直すことになります。
 以下の最後のCさんの文は、ぜひやってみていただけたらと思います。Cさんの文は、単文が二つある重文のかたちになっています。また、他動詞と自動詞の間違いもあります。自動詞・他動詞については、別に取り出して指導が必要なので、ぜひ、このHPにある「YouTube日本語講座」の第18回「自動詞・他動詞の使い方」のところをご覧ください。

参考になる記事

☆「エッ?! 日本語にも文型があるの?~知っておきたい日本語5つの基本文型」
https://nanchosien.blog/five-sentence-of-japanese/#five-sentence

☆「自動詞・他動詞の指導~小3国語単元『まいごのかぎ』を通して
https://nanchosien.blog/intransive-verbtransive-verb/#where-is-the-key

☆YouTube日本語講座 第18回『自動詞・他動詞の使い方』
https://nanchosien.blog/intransitive-verbtransitive-verb/#intransitive-transitive-verb

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