動詞語彙数、どうやって調べる?~「動詞語彙チェック30」の使い方

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保護者からの質問

 「わが子は聾学校幼稚部年長組に通っていますが、先日、獲得している言葉の数、とくに動詞が少ないこと、動詞が少ないと文が読めないと言われました。わが子は聴力100dB補聴器装用で手話で会話することが多く、中等度難聴や人工内耳のお子さんに比べて語彙が少ないように思います。小学校入学頃までにどのくらいの日本語の語彙数とくに動詞の数が必要なのでしょうか? また、どうやって語彙数を調べればよいのでしょうか?」

 このような質問をいただきました。まず、就学時に必要な語彙数についてですが、研究者によって開きがありますが、6歳頃で聴こえる子はだいたい3000語~7000語と言われています。かつて聾学校では就学時3000語習得が目標と言われ、各聾学校では「語彙表」を作って「この語彙の習得をめざしましょう!」と指導していた時代がありました。
 確かに語彙数は多いことに越したことはないですし、上記ファイルのように社会に出てからも指摘されることなので、きこえない子にとって語彙数の問題は“永遠の課題”といってよいかもしれません。ただ、ここでは文を理解する上で最も重要な品詞である動詞について考えてみたいと思います(相手に伝えたいことは文末の述語に表現されます。そしてその文末に来る品詞は圧倒的に動詞が多い)。

 そこでまず、小学校入学までに必要な動詞の語彙数について考えてみます。質問された保護者の方のご心配も、この語彙数で小学校の教科書を読んでわかるのだろうか?ということでしょうから、就学時に習得しておきたい動詞語彙数とそのチェック方法について紹介したいと思います。

教科書を理解するために必要な動詞のかずは?

 具体的に国語の教科書について考えてみます。小1国語教科書(上・下)に出てくることばのうち、きこえない子が苦手なのは動詞(と助詞)で、出てくる動詞の8~9割が理解できていれば、自分で文を読んでだいたい意味を理解できます。では、小1国語に出現する動詞はどのくらいなのでしょうか? 
 以前に筆者が調べたときの結果は、光村図書発行の小1国語上・下で動詞異なり語彙数は250語、全異なり語彙数は1,500語でした。このことから、就学時に必要となる獲得語彙数としては3000語、最低2,000語以上というかずは一応妥当と言えるかずでしょう(教科書に出てくるのはほぼそのうちの語と考えられるので)。また、全語彙数の2割くらいが動詞と考えると、400~500語の動詞が習得されていれば教科書は一人で読めると考えてよいと思います。
 といっても、「偶発的な学習」(意図せずとも耳から自然にきいて学ぶことができることで、聴児のことばの習得も同じ。聴力ゼロデシベルの聴児と補聴器や人工内耳装用の難聴児との決定的な差はここにあります)が困難なきこえない子には、この数でも相当難しいです。しかし、一方で日常会話に必要とされる語彙数はだいたい1500語と言われており、このレベルの語彙の習得を目標とするなら難聴児にも無理な数ではないと考え、そのうち動詞を300語(全語彙数の20%)として作ったのが『親子の手話じてん』でした。

『親子の手話じてん』でチェックする

 『親子の手話じてん』は、筆者が動詞に重点を置いて編集したもので、300語の動詞が掲載されています。ここに掲載されている動詞は、手話にも日本語にも両方ある動詞です。そして手話を幼児期に使って育ったきこえない子は、手話での動詞は日常会話の中でほぼ自然獲得していますから、だいたいこのじてんに掲載されている300語の動詞のうち90%は知っているはずです。そのことを前提にして『動詞語彙チェック30』という、誰でも簡単に調べられるチェックリストを作ってみました。つまり、知っている手話と日本語とが結びついている動詞がいくつあるのかが、このチェックリストでわかります。

『動詞語彙チェック30』について

 『親子の手話じてん』に掲載されている動詞300語の中からランダムに選択した30語(全掲載動詞数の10%)について調べます。

【チェックの仕方】
 ①各問題の動詞のイラストと手話イラストを見て、「雨が(  )」の(  )に動詞を書いてもらいます(幼児の場合は指文字や音声で言えればOK)。 
 ②30語についてチェックしたら正答数を調べ、正答数を10倍した数値が、じてんに掲載した動詞300語のうちの習得しているおよその数です。

 もし仮に正答数が10なら、10×10=100語が子どもの習得している動詞語彙数と推定されます。もちろん辞書に掲載されていない動詞を知っている場合もあるので、100語プラスアルファがその子の習得している動詞語彙数です。教科書が自分で読めるためにはこの動詞数では少ないですから、動詞を増やすための支援・指導が必要ということになります。
 では、どうやって動詞の数を増やすのでしょう? その方法について、次回、一緒に考えたいと思います。

『動詞語彙チェック30』問題用紙はこちら

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