「ことばとかず」を学べるオリジナル教材~「くまちゃんの一日」すごろく(幼児・低学年対象)

動詞
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 きこえない子の苦手な動詞と二語文の習得とかず概念の習得をねらいにした総合的な学習教材を作ってみました。ダウンロードしてプリントアウトすれば使えます。お子さんと一緒にあそびながら、ぜひ使ってみてください。
すごろくを作る材料となるイラストとすごろくの展開図は、下記からダウンロードしてください

この教材で出来ること

ことばの学習~動詞を身につけよう!

「目に見えるもの」の名前(名詞)は、きこえない子にも比較的習得しやすいですが、人の動作やものの動きを表す動詞は、事物名詞のように実物で示すことができません。また、一つの動詞であってもその変化・活用は100以上もあるので、きこえない子には身につけにくいことばです。きこえる子であれば日常会話の中で実際の場面に応じて動詞を使っていくことで活用を含めて自然に獲得できますが(軽・中度難聴児や人工内耳装用児はある程度それができます)、手話中心に育っている高度・重度難聴幼児は、まず、動詞そのものの語彙数が少ないといった課題が生じがちです。

 では、動詞を増やすためにはどんな工夫をすればよいでしょうか?  
①日常会話の中で手話だけでなく、指文字や文字をたくさん使って会話する。②絵日記の中で文を作り、読み・話し、書かれた文を覚える。③絵本の読み聞かせで手話での読み聞かせだけでなく、対応の手話を使って読み聞かせ、子どもにも書かれた文を読ませる。④ことばあそびやプリント・ワークなどに取り組むなど、いろいろ取り組むことはありますし、そこで大事なことは、子ども自身が、音声と手話と指文字を使って、日本語の文を作り表出する(発音明瞭度は関係ありません)ことです。とにかく間違ってもいいので、日本語で子ども自身が思ったことを表現すること、それが日本語習得につながります。

 今回紹介する「くまちゃんの一日」すごろくは、朝から晩までの子どもの一日の生活の中のさまざまな場面(「起きる」から「寝る」まで)を40ほどの場面にして並べてあります。生活場面なのでどの子もイメージがもてるので、その場面にまつわる単語や文も覚えやすいと思います。

 また、文を作るために最も大事な品詞は動詞です。自分の要求を相手に伝えるために動詞は不可欠です(「ぼく」「アイス」と名詞だけ並べても相手に要求は伝わらず、「食べたい」といった動詞が必要です)。そこでまずは動詞を増やそうということになります。そして動詞の中でもイメージしやすい(=習得しやすい)日常動作語(=動詞)から入ることが基本ということもわかります。手話では「食べる」も「飲む」も知っている。けれど、日本語と結びついていない子は、この日常動作語から拡げていくとよいでしょう。

単語や文を読む練習をしたり、文を覚える練習をしよう!

 サイコロを振って止まったところには、その場面を表す単語や文(2語文)が書いてあります。止まったところには単語や文が書かれていますので、必ず、音声+指文字を使って読ませます(音声は明瞭度は問いません。自分が何を言っているかそのイメージを持つことが大事です。ただ、音声だけでは正しく読んでいるのか確認ができないので、指文字も同時に表出させます)。
 すごろくは相手と速さを競うゲームですから大人も子どもも楽しめます。何度もやっているうちに自然に動詞や文を覚えることができます。ゲームを楽しみながらことばを覚えられるので一石二鳥です。

かずの学習~こんなことができるよ!

足し算の練習をしよう!

 このすごろくでは、さいころを二つ使います。さいころには、子どものもっているかずの概念に合わせて、「0」から「6」までの●を描いておきます。この二つのさいころをふって、「合わせた」「足した」かずだけ進みます。例えば、その子のもっている数の概念が「6」くらいであれば、1から6までの●が描かれたふつうのさいころを使って遊べばよいのですが、「0」という概念も教えておきたいので、あえてオリジナルさいころを作って●のかずを調整します。

 また、何度も繰り返して遊んでいると、最初は、出た●のかずを「1,2,3・・」と数えていた子もパッと見て直感的に把握できるようになってきます(かずのイメージがもてるようになる)。そうしたら●ではなく、さいころを数字で表示するように替えます。二つのさいころの数字をみて、直感的に「合わせた数」が頭の中で計算してわかるようになったら、基本的な足し算(合わせていくつ、足すといくつ)が出来る力がついてきたといえます。

引き算の練習をしよう!

 数字だけを見て足し算が直感的に(つまり暗算で)できるようになったら、今度は、二つのさいころを使って引き算の練習をします。この記事の最初のほうに添付した図には、●と○(赤丸)のさいころがおいてありますね(ちょっとひしゃげてますが)。●のさいころは4~9までの●が描かれていますし、〇(赤丸)のほうは0~4までです。これらのさいころをふって、●のかずから○(赤丸)のかずを引き算し、出た答えのかずだけ進みます。最初は、指を使って数えていた子どももだんだん直感的にできるようになってきます。そうしたら、●や○でなく、数字に替えます。

「かず」の概念がまだ習得されていないか、数概念「2~3」位までの子は・・

 かずがまだよく理解できていない子の場合は、さいころを1つだけ使います。さいころの目は「1」「2」「3」の3種にします(「3」までの数概念を持っている子なら「4」まで)。さいころをふって、出た目の上におはじきを置きます。例えば「●●●」だったら、この●の上におはじきを置きながら「1,2、3」と一緒に数えます。次にそのおはじきを取って、すごろくの上に置き、「1,2、3。ここまでで終わりだね」と数えて、その子の駒を、おはじきのかずだけ(ここでは「3」)進めます。

 かず概念の基本は、まず、かぞえることから始まります。すごろくはもちろんですが、日々の生活の中でのかずに関わる場面で、モノをかぞえる経験をたくさんやるようにします。「おやつ」の場面では、子どものモチベーションも高まるのでかずの学習にはもってこいです。「多い方をとっていいよ」「みんなに1つずつくばって」「2つ残ったね」「1つ足りないね」など、その場に応じた声掛けをします。
参考までに、下に「かずの力の伸ばし方」と「子どものもっている数量概念の調べ方」を添付しておきます。

 

絵カードであそぼう!

 すごろくを楽しむだけでなく、別に準備している絵カード・文字カードをダウンロードし、それらを使っていろいろな遊びが出来ます。例えば、下図では、「同じものを集めよう!」。絵カードと文字カードを一緒にして山積みし、場に4,5枚出しておきます。順番を決め、山積みされたカードから1枚引きます。引いたカードを必ず音声と指文字で読みます。そのカードと合うカードが場にあればゲット。なければ引いたカードを場に表にして置きます。次の人も同様にやります。たくさん集めた人が勝ちです。
 それからもう一つは「ビンゴ」。やあそび方は皆さん、ご存じと思いますのでここでは省略します。このようなゲームはほかにもいろいろ考えられます。例えばほかにも「神経衰弱」とか「ババ抜き」などもできます。

絵カード&文字カードは、下記からダウンロードできます。基礎コース用と標準コース用の二種類あります。

プリントをやってみよう!

 楽しく遊んだら、次は、すごろくに合わせたプリント問題を二種類準備してありますのでやってみましょう。プリントの右上に「もんだいB1」から「もんだいB8」までの8枚のプリントがあります(下図)。また、「B」と入っていないタイプの問題プリント(12枚)もあります(下図)。こちらのほうがやや難しいです。子どもに合わせて使いましょう。また、問題は子どもに合わせて変えてもかまいません。ぜひ、やってみて下さい。

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 問題プリント(PDF)のダウンロードは下記からできます。基礎コース用(8枚)と標準コース用(12枚)があります。

参考になる記事

☆『幼児期からどうやって動詞を増やす?』

https://nanchosien.blog/how-to-increase-verbs1/#how-to-increase-the-number-of-verbs

★『難聴児は、なぜ、算数文章題が苦手か?』

https://nanchosien.blog/arithmetic/#arthmetic

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