第31回 「なにで名詞」&「なにで名詞構成語」(15分)

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  今回は、「なにで名詞」について学習します。「なにで名詞」とは聞きなれない品詞ですが、国文法でいう「形容動詞」のことです。形容動詞は国文法(学校文法)で使われている文法概念です。例えば「美しい花」の「美しい」は形容詞ですが、「きれいな花」の「きれいな」は形容動詞で、形容詞と似たような使われ方をします。 
 しかし、活用は文語文法の動詞「なり」「たり」の活用と同じ活用をすることから、「動詞」グループに入ると考えられていました。

 ただ、現在の口語文法では「なり・たり」活用はほとんど使われおらず、活用する品詞と考えるよりは、右の図のように、名詞グループの中のある特定の品詞に助動詞や「な・に・で」などがくっついたものと考える方がわかりやすく、理にかなっているということで、国文法を支持しない研究者は、形容動詞という品詞は使っていません(例えば新村出「広辞苑」、時枝誠記「名詞+助動詞」、江副隆秀「なにで名詞」など)。

 ここでは、基本的な日本語の習得途上にある難聴児にとってわかりやすい「なにで名詞」という品詞名(=江副文法)を用いたいと思います(なお、日本の学校教育では国文法が採用されていますが、この理論が「正しい」から採用されているわけではなく、戦前からの歴史的経緯の中で採用されてきたということです。以下、「なにで名詞」について説明します。

今回の学習内容

なにで名詞とは?

  「なにで名詞」は、形容詞のように、もの、こと、心などの様子を表しますが、名詞グループなので活用はしません。例文「しずかな人」「しずかな朝」のように、語幹(しずか)に「な」をつけて、うしろの名詞や時数詞を修飾することができます。 また、語幹(しずか)に「に」をつけて、「しずかにする」「しずかに歩く」など、動詞を修飾することができます。さらに、語幹(しずか)に「で」をつけて、「しずかで美しい人」「しずかで地味な 性格」などのように、形容詞やなにで名詞の前にもってくることもできます。ほかにも「しずかなら」(仮定)、「しずかだろう・でしょう」(推量)、「静かだ+から」(接続)などの使い方があります。

形容詞と混同しやすいなにで名詞

  上図に示すように、「大きな」「小さな」などは一見すると「なにで名詞」のようにみえますが、これらは形容詞の特殊な形と考えた方がわかりやすいです(国文法では「連体詞」)。
 また、「きれい」「とくい」などは形容詞とよく混同し、子どもの日記にも「きれいかった」などの誤りがよくみられますが、これらは「なにで名詞」ですから、「きれいだった」が正しい使い方です。
 あと、「から」を使って文をつなぐときの注意点ですが、形容詞や動詞の場合はすでに活用が語の中に含まれているので「食べる(動詞)+から」「かわいい(形容詞)+から」になりますが、なにで名詞は活用しないので、名詞と同様に「きれい+だ+から」と「だ」をつけて「から」をつけます。

なにで名詞構成語

 名詞、動詞、形容詞、なにで名詞に「~みたい」「~そう」「~よう」「~げ」「~的」をつけると「なにで名詞」と同じ働きをする「なにで名詞構成語」になります。

使用テキスト・問題・資料

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