幼児期での動詞語彙の増やし方や動詞活用の学び方について、「幼児期の動詞語彙の増やし方(1)」で、①会話の中で、②絵日記の中で、③ことば絵じてんの中で、という3つの方法について紹介しましたが、今回は、④ことばあそびを通して動詞の語彙や活用を身につける方法について紹介します。
動詞のゲームができるようになる年齢は?
聴児はだいたい3歳を過ぎると、「大きい・小さい、長い・短い、多い・少ない」といった形容詞や「あそぶ・作る・座る・歩く」といった動詞がわかるようになります(Jcoss第1部「語彙の理解」で「動詞・形容詞」がどの程度、習得されているかどうか、簡単なチェックができます)。
また、年少頃になると、紅白のゲームでの勝ち負けや鬼ごっこのルールもわかるようになり、じゃんけんのルールもわかるようになってきます。この頃になると、簡単なことばあそびのルールがわかるようになってくるので、絵カードなどを使った比較的単純なゲームが楽しめます。
『反対ことばカード』(銀鳥産業発売)を使って
まず、日本語の活用は置いておいて、動詞の基本形(終止形)を使って動詞語彙そのものを増やしましょう。以前は『動作の絵あわせカード』(銀鳥産業)というのが発売されていましたが、これはすでに販売終了しているので(メルカリなどには時々出品されることがありますが)、『反対ことばカード』(銀長産業)を使って動詞や形容詞も一緒に、また、反対概念の学習も含めてあそびましょう。以下、遊び方をいくつか紹介します。
「ババ抜き」(入門コース)
年少さんならまずは「ババ抜き」の要領で遊びます。例えば「大きいー小さい」などの左右2枚のカードを真ん中で合わせると、対になる反対語が完成しますので、カードを配って反対語のペアがあったら場に出しましょう。最初に自分の手持ちのカードがなくなったら勝ちです。注意点としては、反対語のペアがあった場合は、「大きいー小さい」と必ず言ってから出すルールにします。遊びであると同時にことばの学習の場であることも忘れないようにしましょう。
「かんたん神経衰弱」(入門コース)
全部のカードを伏せて、「神経衰弱」をするとカードが多くなりすぎます。そこで年少さんでもやれるように工夫をします。まず、全てのカードを裏にして山積みし、場に4,5枚だけ表にして出します。あとは順にめくって場のカードと反対(ペア)になるカードが出たらゲットします。ゲットした人は続けてもう1回やれるルールでもいいですし、1回ずつ交代でもよいでしょう。たくさんペアをゲットした人が勝ちです。ペアがあったときには、必ず「大きいー小さい」などと手話や日本語で言ってからゲットするようにしましょう。
「反対語かるた」(初級コース)
やり方は通常のかるたと同じです。まずペアのカードの一方をとり札にして床に表にして並べます。他方を読み札にして伏せて山積みにします。山積みのカードから親が一枚とってその読み札を読みます(手話でやるか指文字・音声でやるかは子どもに合わせます)。例えば読み札が「ちいさい」であれば、反対の「おおきい」をとり札の中から探します。たくさんとった人が勝ちです。手話や日本語で言うことを忘れないように。
「動詞すごろく」(入門コース)
子どもの日常生活動作の中から、覚えてほしい「動作語」(食べる、飲む、歩く、寝る、言う、帰るなど)を30~40語程度選んですごろくを作ります。最低A3版くらいの大きさの方がわかりやすいでしょう。スタートからゴールまでのコマ数も自由に。動作の絵は、自分で描く、子どもの動作を写真で撮りそれを使う、ネットからイラストを借用する、「おやこ手話じてんイラストCD」(全国早期支援研究協議会発行、1,000円)からコピーするなどいろいろ方法があります。「1回休み」「〇〇までもどる・すすむ」なども自由に。ゲームをするときは、必ず止まったところの動詞を言うようにしましょう。応用として、朝「起きる」からスタートして「寝る」までの「一日の生活すごろく」(上図)なども面白く遊べます。
「王様の命令」(入門コース)
王様(一人)と家来(複数)を決め(3人以上でやるゲーム)、王様と家来に「命令」し、家来はその「命令」に従うゲームです(下図)。「命令」の中身は「食べる、飲む、笑う、泣く、走る、寝る」など10~15程度の動作語。初めに家来が「王様、ご用はなんですか?」と尋ねます。王様は動作のカードから任意にカードを選び、「命令は、これじゃ!」と家来に見せます。家来はそのカードをみて書かれている動詞のジェスチャーをします。単純ですが楽しめます。
「かんたん動詞ビンゴ」(初級コース)
ルールは「ビンゴ」と基本的には同じですが「リーチ!」などのルールはなしにし、幼児でもできるように少し簡単にします。使用することばは動詞です。上の例では「運動会」をテーマにした例(「遠足」「劇あそび」などの行事をテーマにしてもできます)。運動会があったとき、運動会にちなんだ動詞を子どもと話し合いながら探します。その動詞が20くらい集まったら絵カードと動詞の文字カードを作ります。絵カードの中から任意に選んでビンゴ盤(3×3)に並べます。絵カードのほうは裏返しにして山積みにします。準備ができたら、山積みのカードから1枚引き、表にして絵を見せます。「大玉ころがし」の絵であったら、動詞の文字カードの「ころがす」をさがします。あったらカードを裏返しにします(上の例では赤丸をつけていますが)。カードが縦横斜めのいずれか一列(3枚)が裏返ったら「ビンゴ!」と叫びます(上図では真ん中の縦の一列が完成)。
応用編として動詞を基本形ではなく、「ころがした」などの過去形にすることもできます。
「動詞かるた」(手話付)を作って遊ぼう!
ここでは、実際に「動詞かるた」を作っていろいろないろいろな遊び方を紹介します。まず、手作りの「動詞かるた(絵カード)」(PDF)をダウンロードしてください(一部名詞も含まれています)。ダウンロードして印刷したら、絵に色を塗って下さい(とり札)。文字カード(読み札)はないので別に作ります。文は子どもに合わせて動詞の単語だけでもよいですし、二語文にしてもよいでしょう。
動詞50音ならべ(初級~中級コース)
「7ならべ」の要領であそびます。最初に「な行」のカードを場に出します(「な・に・ぬ・ね・の」)。じゃんけんをして勝った人から順に、な行の文字の左右に出せるカードを出します。以下、左右上下につながるカードは出せますが、斜めは出せません(例えば、右の例で「す」の上の「し」と、右の列の「く」と下の「せ」は出せますが、「き」と「け」は出せません)。出せるカードがない人は1回休みです(「休み」は3回までなどのルールを作るのも可)。手持ちのカードが早くなった人が勝ち。カードを出すときは必ずそのカードのことばを音声+指文字で言って、次に手話をするというルールにすると動詞と日本語のマッチングに役立ちます。
覚えていたらどうぞ!(入門コース)
山積みの絵カードから1枚めくり20秒間見せて、何の絵カードか覚えてもらい、裏にします。次にまた山積みのカードから1枚めくり同様に覚えてもらいます。これを繰り返し、5枚裏返しにして一列に並べます。最後にもう一度20かぞえて、「さあ、覚えているカードがあったら何のカードだったか言って、めくって下さい」と記憶しているカードを言ってもらいます。当たったらもらって次のカードに挑戦。子どもに合わせて日本語でやるか手話でやるか決めておきましょう。さて、何枚覚えられるでしょう?
わかったらゲット!(入門コース)
絵カードを裏返して山積みにしておきます。とる順番を決めて、山積みの絵カードから一枚めくります。そのカードが日本語(または手話)で言えたらゲット! 例えば、今開いたカードが「あ」の絵カードなら、動詞だけ言えればよいというルールにすれば「あける」と言えたらOKです。必ず絵にマッチした動詞を使って二語文を作るルールなら、「ドアを あける」と言えたらOKです。ゲットしたらもう一回めくって挑戦可にするのもよいでしょう。
動詞ビンゴ(初級~中級コース)
絵札をそれぞれ16枚ずつ取って写真のように表にして配置します(4×4)。文字カードのほうは裏にして山積みにします。順番を決めて、山積みのカードから1枚めくります。その文字カードに合う絵カードがあったら裏返します(必ずその絵の手話をします)。右の写真では「ちぎる」ですから、どちらにもありません。
順番に繰り返し、縦か横か斜めかに3枚並んだ時に「リーチ!」と叫びます(あと1枚で上がりだよ、という合図)。4枚一列に並んだ時に「ビンゴ!」と叫んで上がります。
動詞すごろく(入門~初級コース)
全部の絵カードを一列に並べます。順番はランダムでよいです(あいうえおの順を覚えさせたいときは「あ」から「わ」まで順番に並べ、さいころをふって出た数進む時に必ず「あ・い・う・え・お・・・」と唱えるようにします)。止まったところの動詞を手話や日本語で言うようにします。どちらにするかは子どもに合わせて。ばいきんまんのところで止まったらさいころをふって出た目のかずだけ下がるとか、止まったところの絵をみて正しく手話や日本語が言えなかったら一つ下がるなどのルールを決めるのもよいでしょう。
ここに紹介した遊び方はほんの一例です。ほかにもいろいろな遊び方ができると思いますのでぜひお子さんと一緒に楽しい遊び方を考えてみて下さい。そして、動詞の語彙を増やしましょう。