今回の学習内容
今回と次回は「動詞」について学習します。動詞は、きこえない子の苦手なもののひとつです。理由はいくつかあります。まず、動詞は事物名詞のように、そこにあるのが見えて区別することができることばとは違います。例えば「テレビの上にスマホと本が置いてあったとして、「スマホとって」と言われれば、スマホと本とを一緒にとる人はいないでしょう。スマホ(名詞)と本(名詞)とは別のものだと区別がついているからです。しかし、動詞の「歩く」と「走る」とはそう区別がつくわけではありません。私たちは一連の動きのどこかの時点で「歩く」と「走る」とを区別をしていますが、どこからが「走る」でどこからが「歩く」のかはそう明確ではありませんから、子どもはそれを何度も経験する中でだんだんと区別するようになるわけです。
さらにもうひとつ難しいのは、動詞は多様に活用することです。ですから、かなり使い慣れないとルールを身につけることが難しいということがあります。きこえる人は、生まれてこのかた何度も何度もこういう言い回しを耳にし、自分でも使う中で、ほとんど無意識にそのルールを習得していきますが、きこえない子にはそれはなかなか難しいことです。聴力が重くなればなるほどその困難さは増します。
そこで、ある程度、きこえない子には、文法を意図的にかつ視覚的に学習することで対応する必要があります。その学習は聾学校では小学1年生から積み重ねていきます。「動詞の活用パターン」の学習、「肯定文や否定文」の学習、「使役文や受動文」の学習、「~ている(て形)」などの学習、「現在形・過去形」の学習等々・・。こうした学習の結果として、文での動詞部分の正しい理解・表現ができるようになります。