難聴幼児の「ことばのチェックリスト(年少・年中版)」でことばの発達をチェック!

発達の診断と評価
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 難聴児は語彙が少ない、と言われます。では、どうやって語彙を増やせばよいのでしょう? 日々の生活の中で、様々な体験や実物との出会いの中で、ただ用を足せば終わりというルーティーンな会話でなく、その都度、そのモノやコトの概念を深めひろげるていねいな会話をする、ということに尽きると思います。そして、そのことの大切さについては、このHPでもいろいろなところで触れてきました。また、上の図は物事の概念をどのように広げていくかについて述べた例です。 
 とはいってもやはり「ここは押さえておきたい」というポイントとなることばというのは確かにあります。例えば『難聴児の認知・言語の発達(7)~「学習言語」につながる幼児期の「考える力」5選』(下記URL参照)で触れた、「分類・カテゴリー」「比較概念」「比喩・類推」「因果関係」「仮定」などは、認知・思考の面に重点をおいた思考方法で、将来の抽象的思考(「学習言語」)につながる力として、ぜひ幼児期に取り組みたいことで、そのために生活の中でどんなことばを使うとよいかについて示したものです。 https://nanchosien.blog/ability-to-think-best5/#best5

さて、ここでは、幼児期の年少・年中段階でぜひ身につけておきたい、主に言語の音韻・語彙・運用面からみた項目を12項目選び、リストにしてみました。これまでの難聴幼児の支援・指導経験から、年少段階から取り組んでおくとよいこと、難聴児の苦手なところ・弱いところを中心にリストアップしてあります。
 また、ことばのチェックリストだけでなく、そのために大人の側はどんな対応をすればよいか、個々の項目への対応ではなく(個々の項目への対応は、日常の会話の中で、リストに例示しているようなことばを随時使用すること)、大人の側の対応の原則・注意点についても10項目に分けてリストにしました。そしてそれぞれのリスト項目は、3段階で評価できるようになっていますので、一度ぜひチェックしてみてください。そして、半年後とか1年後にまた改めてチェックしてみると、どこが伸びたのか、まだ課題として残っているのか、対応の仕方の改善も含めてわかると思います。

ことばのチェックリスト(基礎編・主に年少・年中対象)

NO   項目わかることば(手話・日本語)をチェック。     *他にわかることばは余白に書いて下さい。わかる少しわかるわからない
50音(100音)の配列がわかる50音清音のア行から順番に言える。ア列から順番に横に言える。濁音・半濁音・拗音が順番に言える。
文字⇔指文字の変換ができる(100音)清音、長音、濁音(ばびぶ・・)、半濁音( ぱぴぷ・・)、拗音(ぴゃぴゅぴょ・・)
色や形のことばがわかる色や形のことばがわかる 赤、青、黄、緑、水色、黒、白、丸、三角、四角など
比較・反対のことばがわかる。比べる、どちらが、~より、大きい・小さい、長短、明暗、高低、多少、新古、硬柔など
上位概念のことばがわかり、仲間分けができる動物、魚、鳥、野菜、果物、乗物、虫、食べ物、飲物、お菓子、食器、文房具、洋服など
動作のことば(動詞)がわかる起きる、着替える、洗う、食べる、飲む、行く、帰る、入る、出る、見るなど生活動作語を中心に動詞全般
身体の名称がわかる頭、目、耳、鼻、口、舌、首、手、ひじ、足、お腹、膝、親指、人差指、爪など
気持のことばがわかる嬉しい、悲しい、楽しい、つまらない、悔しい、淋しい、うらやましい、困る、驚く、飽きるなど
挨拶のことばがわかるおはよう、こんにちは、こんばんは、おやすみ、ただいま、お帰りなさい、さようなら、ごめんなさい、ありがとう、お願いしますなど                     
10疑問詞(5W1H)がわかるいつ、だれ、どこ、なに、どうする、どうして(なぜ)など
11数量のことばがわかるいくつ、多い・少ない、合わせる、分ける、増える、減る、取る、残りなど
12原因結果、比喩、仮定のことばがわかる~だから、どうして、そのわけは、~みたい、例えば、もし~なら・・など

子どもへの対応チェックリスト(大人用)

NO           子どもへの対応ほぼできている少しできているできていない
正しい文で話し、問いかけるようにしている。 
【例】×「行くよ!」→〇「学校に行くよ」。子ども「みず!」→親「水が飲みたいの?水をちょうだいだよね」水をちょうだい」と拡充模倣する。
子どもの興味に合わせて毎日、絵本を読んでやり、内容について話し合ったり、いろんな話をする時間をとるようにしている。
【例】絵本を読んで再現あそびをする。どんな話か、子どもに話してもらう。ヒント「はじめに、次に、それから、最後に」など手助けする。
絵日記をかいたり、ことば絵じてんを作ったりしながら、経験したことを話し合い、文や絵・写真などでまとめるようにしている。
いつもメモ帳を持ち歩き、機会をとらえて文字や絵にかいてみせるようにしている。
会話する時、手話だけで終わりにしないで、日本語の習得に結びつけるよう意識している。  
【例】大事なことばは指文字で繰り返したり、文字に書く
おやつなどの時、数に関することばを意識して使うようにしている。【例】「あわせる・もらうと全部で」「とる、あげると~つ残る」「~つずつ配る」「どちらが・~より多い・少ない」
簡単な言葉遊びをして言葉に関心を持たせるようにしている。
【例】「この部屋にある赤いもの探そう」「『あ』のつくことばなあに?」「反対ことばは?」「虫の名前5つ言ってね」
子どものことばや行動を共感的に受け止め、受け入れるようにしている。【例】「~したかったんだね」「自分で考えたんだ。すごいね」「できるようになるから大丈夫だよ」
禁止や命令ではなく、「~したら」と提案の形で対案を述べ、子ども自身に考える余地を残すようにしている。
【例】「ママはこう思うけどあなたはどうしたいと思う?」
10他児と比べず、子どもが前より進歩したときに承認し、ほめるようにしている。【例】「できるようになったね。すごいね!」「前は難しかったけどやったね!」

☆ことばのチェックリスト(年少・年中用)PDF版 

参考になる書籍

☆『どうすればことばが育つか?~9歳の壁を越えるために』剱持・河合・木島著 全国早期支援研究協議会発行 A5版 108頁 900円 https://nanchosien.blog/how-to-learning/#how-to-learning

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