教科書の文を「名詞修飾」にしよう!~聾学校小学部2年国語授業から

名詞修飾
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名詞を詳しく説明するときの日本語の特徴

修飾する語句が修飾される名詞の前にくる

  日本語では、ある名詞について詳しく説明するとき、文をその名詞の前にもってきます。これを名詞修飾といいますが、その修飾語句は理論的にはいくらでも長くしていくことが可能です。 例えば、「マンゴーを 食べた」という文があったとします。これをもうちょっと詳しく説明しようとすると、「マンゴー」の前に詳しくする語句(名詞を修飾する語句)を持ってきて、「甘いマンゴーを 食べた」とすることができます。さらにもうちょっと詳しくしようとすると「沖縄から宅急便で送ってくれた甘いマンゴーを 食べた」となり、さらに詳しくすると「おじいちゃんがその日の朝に収穫して沖縄から宅急便で送ってくれた甘いマンゴー を食べた」→・・・。以下、理屈の上では、いくらでも詳しく長くすることができます。ただ、修飾語句が長くなってくると一体どこからどこまでが名詞を修飾した語句・文なのかわかりにくくなってきます。これが難聴児の文の理解を妨げる要因のひとつです。

修飾部分と被修飾部分との間に文法上の装置がない

 もう一つの特徴は、修飾する語句とその後ろの修飾される名詞との間には、とくに手掛かりとなる文法装置がないことです。その点、英語では、which,who,that といった関係代名詞という文法装置があるので、どこからがその名詞の修飾部分なのかがわかるようになっています。日本語では、どこからどこまでが、その名詞を修飾する語句なのかは、読者が文脈の中で判断するしかありません。文の前後から判断できればよいのですが、必ずしもそうとは言えない文もあります。
 例えば、上図の例は、小2国語教科書に採用されている『スイミー』(レオ・レオニ作・谷川俊太郎訳)の中の一文です。「にじ色のゼリーのようなくらげ」。はたして「にじ色」なのは、「ゼリー」なのか「くらげ」なのか? この一文では判断できません(原文では「にじ色のゼリー」ですが)。もし、邦訳の過程でそれを区別するとしたら句点を入れて区別するしかないように思いますが、あえてそれがないのは、どのようにも解釈できる詩的・幻想的な世界を描写した場面だからなのかもしれません。さて、以下に紹介するのは、難聴児の苦手な「名詞修飾」に挑戦した実践です。小2国語下(光村図書)の中の単元『わたしはおねえさん』での指導。以下、メールから紹介します。

小2年国語で名詞修飾を指導した実践

 「これまで何度か長い名詞句の作り方を授業で取り上げてきたのですが、今一つ子どもたちの反応が薄く、ちゃんと落ちていないなと感じていました。また、教科の授業の中でどう扱えばよいかと模索しているところでした。そこで『わたしはおねえさん』(小2下・光村図書)の単元の中で取り組んでみることにしました。 
 授業では、1〜5場面の各場面の内容を「誰が何をしました」の形で要約していた(子どもたちで話し合って各場面の要点を抜き出した文を作りました)ので、それを「〇〇をした誰」という形の小見出しに書きかえようというテーマで授業を設定してみました。(上板書)
 今までは「ふーん」といった反応だった私のクラスの子どもたちでしたが、今回はけっこう楽しんで小見出し作りに取り組んでくれました。(授業で使ったワークシートの写真を添付します。下図)この方法なら、名詞句作りを教科学習の中にも取り入れられるかもしれないなと思っています。3学期の『おにごっこ(説明文)』や『スーホの白い馬』の中でも小見出し作りとして名詞句作りを取り入れてみようと思っています。
 因みに自立活動のように一人ひとりの課題に焦点化して指導内容を設定することも大切ですし、教科書の中で文法指導に取り組むことも般化という意味でも有効だなと感じました。」

名詞修飾の実践について

 以上が、聾学校小学部2年生担任の先生の実践の紹介になります。自立活動という枠組みの中で「名詞修飾」の指導を行うことももちろん必要ですが、教科書等の文の中での具体的な読みの力や日記・作文等での表現する力につなげてこそ、文法指導が意味をもちます。そういう点で今回の指導は、とても意味のある実践と思います。
 そして、「名詞修飾」を次に発展させるとしたら、複文の指導につなげることも可能でしょう。例えば、1場面で作った名詞句(「自分の歌を作ったちょっぴりえらいすみれちゃん」)を、次の2場面のまとめの文の主語「すみれちゃん」のところにそのまま持ってくれば、以下のような主述関係が複数含まれるさらに長い複文を作ることもできます。(上図参照)

自分の歌を作ったちょっぴりえらいすみれちゃんは、庭に出て花壇のコスモスに水をかけました」

 複文はすでに2年生の教科書に出てくるので、名詞修飾の発展として今後どこかで指導するとよいのではないでしょうか。(木島記)

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