「絵日記」の前に・・
絵日記の前に大切なこと。それはお子さんがどれだけ毎日の生活を楽しめているかということ。そしてもちろん親御さんも一緒に楽しんでおられるかということ。親子で日々、「今日は何してあそぶ?」という楽しい生活の中でこそ、子どもは心身ともに伸びていくからです。もちろん、楽しいことばかりではないでしょうし、忙しくて時間的な余裕がないとついついご飯を作って、食べさせて、お風呂に入れて、着替えさせて・・と機械的にルーティーンな生活をこなしていくだけ、子どもとの会話は指示することばかり・・となりがちです。
でも、一日に15分でも30分でも子どもと”一緒に”いる時間、例えば、お母さんと一緒に通園したり、公園に散歩に行ったり、買い物に行ったり、おやつを作ったり、料理したり、絵本を読んだりする時間があれば、それはとても子どもにとっての大事な生活経験の場になりますし、それが「ことばの力や考える力を伸ばせる場」になります。
例えば、公園でのブランコや鬼ごっこ、ジャングルジム、滑り台などは、しなやかなからだを育てることにつながるでしょうし、一緒に通園や散歩する道々で見る草花や虫、鳥たちは自然や季節への関心や観察する力を育てることにつながります。踏切や電車、バス、交差点の信号、救急車や工事現場、商店街などからは、人々の生活や仕事、社会の決まりやしくみなどの知識を育てることにもつながります。家の中ではどうでしょう? 料理、洗濯、洗濯物の取り入れ、トイレや玄関、お風呂の掃除、ゴミ捨てなど家の仕事(いわゆる家事雑用)を一緒にすることは、生活についての知識や共通の目的に向かって協力することの大切さを学ぶ場にもなるでしょう。
このように考えると、なにも絵日記を描かなくとも、日々の生活の中で実物に触れ、そこで交わされる大人とのやりとりの中で、子どもは、物事の概念を学び、感じたこと・思ったことを表現する力や相手の話すことや相手の気持ちを理解する力を育てることができます。すなわち、生活の中で起こる出来事・行動・活動の”全て”が、子どもがからだやことばやこころを育てるチャンスなのだと言ってよいと思います。そして、ここまでは、どの子にも必要なことです。そのうえでの「絵日記」です。
日々の生活が楽しければ、描くことはたくさんある!
子どもがやって楽しかったことがあれば、絵日記の材料は十分にあります。保護者の日記ではなく、子どもの絵日記ですから当然と言えば当然です。もし、そんな材料がなく、子ども自身がいやがるのであれば絵日記は思い切ってやめましょう。そして、子どもが楽しめそうな遊びをやりましょう。ままごとでもボール投げでもいいですし、しりとりとかすごろく、クイズなどのことばあそびもよいでしょう。そのうえで時間的余裕があれば、それをその日の絵日記にすればよいでしょう。「ボール投げをしたよ」と絵を添えて3分で書き、それを絵日記にするのもOKです。子どもにとって楽しかったことですから、それを絵日記にするのは、子どもにとってもうれしいことですよね。
絵日記のアイデア・基礎編5選
そして、どうせ描くなら、子どもが見て楽しめる絵日記がいいですね。楽しい方が学びも大きい。そこでここでは、子どもを引き付け、わかりやすく、楽しめ、学びにつながる5つのアイデアを紹介します。年齢的には2~3歳児から使えるアイデアです。それらを参考にして、さらに工夫してみてください。子どもがワクワクする絵日記になるといいですね。
絵日記に仕掛けを作ってみよう!
写真やイラストなどにちょっとした仕掛けがあり、子どもが動かして楽しめます。上の絵日記のひとつ目は「切符の自動販売機」。コインを入れるとうしろから切符が出てきます(手動)。自動販売機は子どもが大好きなもののひとつ。ごっこ遊びとして飲み物の自動販売機を段ボールで作って、お金を入れると後ろの人が缶入りの飲み物を出すあそびなどはとても楽しめます。
次の絵日記は「虫とり」がテーマ。虫かごを作って、この中に別につくったコオロギやバッタを入れることができます。草原で虫をつかまえた体験がよみがえります。下の例なども工夫が施されていて楽しいです。
下に添付してあるのは、「つなひき」。神の裏側に糸がついていて、絵を動かすと絵も動くようになっています。その次のは、「プールに行くときの持ち物」。帽子や綿棒など一つ一つの持ち物(絵)をバッグに入れるようになっています。道具の名前のカードもありますね。その横にあるのは父の日にプレゼントした「シェーバー」。蓋を開けると中にシェーバーが入っています。
チケット、包み紙などの実物を貼ってみよう!
旅行や遊園地など行った時の記念になるパンフレットやチケット類、包み紙などを貼るのもよいでしょう。上の押し花の頁は「ことば絵じてん」の1ページですが、「野原に咲いていた花をとったよ」などと文を加えて絵日記にするのもよいでしょう。
手話や指文字の絵をつけてみよう!
日本語はまだスタートしたばかりといったお子さんは、手話なら知っているけど日本語はまだわからない、ということばがたくさんあります。そこで、そのことばの横に手話の絵を描きます。上の絵日記でも、「少ないー多い」「勝負」「壊れた」「注文」などの単語に手話をつけていますね。また、文字と指文字とが結びついていないというお子さんなら、文字の横に指文字絵を描くのもよいでしょう。
オノマトペを使ってみよう!
オノマトペとは、モノの音(擬音語・例「犬がワンワン吠える」「ドアがバタンとしまった)とか、モノの状態を表すことば(擬態語・例「雨がしとしと降る」のことで、ふつうの日本語に比べて表現が子どもにもわかりやすいです。「このパンは生地がやわらかくて適度な食感もあるね」と言っても幼児にはわかりませんが、「ふっくらして、もちもちだね」と言えば、そのものの持っている性質が直感的に伝わります。とはいっても、「音・声」に苦手なきこえない子たちには、「擬音語・擬声語」は「みえない」こと。ちょっとわかりにくいかもしれません。「きこえる人にはこのような感じできこえているんだよ」という”知識”として知ることも必要でしょう。
下の例は、「がたがた」(擬音語)とか「どきどき」(擬音語)、「ぴよぴよ」(擬音語)など使っていますね。擬音語や擬態語を集めて、イラストで表すとオノマトペのことば絵じてんが作れそうですね。
気持ちの表現に吹き出しを使ってみよう!
人の気持ちは「みえない」ことですから、わかりにくいのはきこえる子にとってもきこえない子にとっても同じです。そこで、表現するときに吹き出しを使うとわかりやすいです。自分の気持ちや思い、他者の気持ちや思いを言語化するときに、ぜひ、吹き出しを使ってみましょう。
以上、5つの工夫の仕方を「基礎編」として紹介しました。発達的にやや幼い頃から使えるものが中心です。次回は少し発展した工夫の仕方を紹介します。