絵日記を楽しくするアイディア~プラス5
『絵日記を楽しくするアイディア』を少し前に2回にわたって紹介しましたが、今回は、日本語の力とくに文法力の向上につながる工夫を紹介します。
文を品詞分類しよう!
日本語の文を作るうえで大事な品詞は、「名詞」と「動詞」「形容詞」、そして「助詞」です。これらを色分け・形分けをしておくとあとで役立ちます。助詞に〇をつける方法は昔からありましたが、私が推奨する方法は、名詞は黄色い長方形で囲む、動詞は(黄)緑色、形容詞は水色で、先のとがったベースを横にしたような形で囲むことです。上の事例は色分けだけ、動詞・形容詞も長方形で囲んでいますが、とりあえずこれでよいでしょう。年長になったら動詞・形容詞も上に述べた形(ベース横型)にして、これらは活用して変化するよ、ということを示しておくとよいと思います(下図)。
動詞・形容詞の基本形を括弧内に書いておこう!
きこえない子にとって、動詞や形容詞は習得が難しい品詞です。その理由の一つが動詞・形容詞は活用するからです。形容詞の活用はワンパターンなので動詞よりは習得しやすいですが、動詞は活用のパターンがいくつかあるのでちょっと面倒です。そこで、その活用パターンの学習を小1・2年頃にやるわけですが、では、幼児期にはどうすればよいのか?ということになります。
きこえる子どもは、毎日の音声言語による会話の中で、その場面にマッチした動詞の使い方を自然獲得できますし、聴覚活用ができる軽度・中等度難聴や人工内耳装用児も、ある程度、耳から学習が可能です。一方、聴力の厳しい子どもたちは、文を読んだり書いたりすることを通して動詞の活用を学習する機会が多くなるので、絵日記の中で動詞が出てきたら、その動詞の横に活用の基本形を括弧書きで書いておくとよいと思います。また、動詞の活用を別のところに取り出して教えるのもよいと思います(上図参照)。
「大きな名詞」を使おう!
日本語の難しさのひとつが、名詞修飾用法です。日本語は英語のような関係代名詞がなく、ある名詞を詳しく説明するためにその名詞の前に語や文をもってきます。そのため、どこからどこまでがその名詞を修飾しているのかがわかりにくい場合があります。日本語のこのような方法に慣れておくために、幼児期の絵日記の中で具体的に使い、示しておくとよいと思います.
接続詞や受動文を使おう!
きこえないない子の苦手な受動文(~れる・られる)、使役文(~させる、~させられる)、授受文(もらう、あげる、くれる)など複数の人の関係を考えさせる文を、自分の経験したことの中で使っておくことが大切です。ただ、大人が意識していないと、なかなかこうした用法は使わないのも確かです。もう少し意図的に使っていくようにしたいものです。
また、ほかにも、接続詞や接続助詞(だから、それで、~ので、~だけど、でも、けれどなど)比較を表す言い方(~より~が~など)、位置関係を表わす言い方(~の上・中・下・前・うしろ・外側・内側・すみ・かどに~があるなど)など、きこえにくい子の苦手な言い方があります。こうした言い方も意識的に、絵日記の中で取り上げるとよいでしょう。
その他のアイディア
見たことを描こう!
日記に書くことは子ども本人が「したこと」が中心ですが、ときには「見たこと」を書くのも大切です。季節の移り変わり、町の人々や乗物、動物や植物の様子や変化、いろいろなものに「あれっ、なんだろう?」と気づく観察力も伸ばしたいものです。
ことば絵じてんを絵日記の中で作ろう!
「ことば絵じてん」は、モノの概念を比較したり、共通の概念を持つものを集めたりなど、語の概念を豊かにし、語彙の拡充につながる大事な取り組み。しかし、絵日記もことば絵じてんも、と二つ作るには負担も大きいでしょう。そこで、必要に応じてことば絵じてんを絵日記の中で作ってしまうという工夫です。
絵日記でスリーヒントクイズをしよう!
年長さんくらいになると、ターゲットになっているものの概念を説明することばから、ターゲットを想像することがだんだんできるようになってきます。ことばをことばで説明する力は、学習言語に必須の力。絵日記の題材がないときや絵日記をじっくり描く時間がないときなど、このようなクイズをするのもいいのではと思います。