遠山紀子さん講演会のお知らせ

研修会・講演会等案内
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☆講演会演題
 「難聴医学生を育てた母に学ぶ『セルフアドボカシーの重要性』~きこえない・きこえにくい人が社会で自分らしく生きていくために」
★期日
 2025年3月15日(土)13:30~15:30
☆場所
 とりぎん文化会館(鳥取市) *Zoom参加OK
★問合せ先
 全要研鳥取県支部(内藤方)T/F 0859(22)2301
☆mail  zenyoukentottori@gmail.com


  重度難聴のお子さんを育てられた遠山紀子さんの記事(『隠したくて、隠したくない~難聴の娘とセルフアドボカシー』)を本HPに掲載(2025.1.10)しました。この記事は多くの方にご覧いただいています。
  お子さんを育てられた中で痛感されてきた「セルフアドボカシー」の大切さについて、今回(3.15)はさらに具体的に、子育ての中でどう取り組まれてきたかを、講演及びズームによる配信を通してお話ししていただけるそうです。ぜひ、沢山の方にきいていただきたいと思います。

 かつて『奇跡の人』として戯曲化・映画化もされた盲聾者ヘレン・ケラーは、「盲と聾とのどちらかの障害をなくすことができるならどちらを望むか?」と問われて、即座に「聾を!」と答えたといわれていますが、私たち人間は、ことばを介して人と関わり、互いの関係を深め、そこに自己の存在意義を実感しつつ生きています。ですから、人との関係性が断ち切られ、孤立した環境の中では生きていけない存在です。その意味において、他者とのコミュニケーションが阻害される聴覚障害は、人間にとって最も本質的な問題に起因する生きづらさと言えると思います。
 しかし、現実には多くの困難が立ちはだかります。例えば、周りが全て音声言語という通常の学校において(就労後の職場環境においても本質的な問題は同じです)、聴覚障害ある子どもがどうすれば周りにあふれている情報を理解し周りとコミュニケーションが可能かを考えてみましょう。まず、授業において他児の発言を含めてその内容がリアルタイムにわかるためには、視覚的な情報保障やその他のさまざまな手立て・配慮が担当教師等によって講じられる必要があります。

 例えば聴力50~60dBの音声言語で会話ができる中等度難聴児であったとしても、通常の学級での授業を聴き取り理解することには相当の困難を伴います。その子どもは教師の話をひとことも聞き漏らすまいと耳を傾け、周りの友人のしていることを盛んに見ながら、教師が今なにを言っているのか、自分は今、何をしなければならないのか、まさに「情報のパズル」を解くために必死に情報のかけらを拾い集め全体像を構成しようとします。このような時、もし教師が黒板に向かって話し続けるなど難聴児への配慮に欠けるなら、その子にはわからない事ばかりが続き、そのうち自分だけの努力だけでは限界があることを感じ、わかろうとする努力を諦め、ただ日々、机に座っているだけになるかもしれません。実際、そのような難聴児は決して少なくないのです。

 では、授業以外の場面ではどうでしょうか? 休憩時間に3~4人の友達と自由におしゃべりし丁々発止のやりとりはできるでしょうか? 教室に流れてくる校内放送の内容や突然後ろから名前を呼ばれてその子は聞き取れるでしょうか? 一見聴こえて話せる難聴児であっても、学校という集団の場では、実際にはきわめて難しいでしょう。
 しかし、もしその子が難聴であることがクラスの中で自然に受け入れられ、必要な情報が周囲の誰かから自然に伝えられるという配慮が日々なされるのであれば、その子の情報・コミュニケーション障害は著しく軽減されるのではないでしょうか? その時、この子は「自分はこのクラスに受けいれられ、ここには自分の居場所がある」と実感するのではないでしょうか。そして、この感覚こそが人が生きていく上で、実は最も基本的に重要な感覚なのだと私は思います。

 近年、医療技術の進歩によって90dB以上の重度難聴児も幼少期に人工内耳を埋め込むことによって、きこえ・発音面での改善がみられるようになってきていますが、コミュニケーションと人間関係の構築という本質的な問題においては困難さは変わりません。それが「聴覚障害」なのです。それゆえに自分の「障害」を卑下することなく、ありのままの自分を積極的に周囲に発信し、周囲の人とのよい関係を築いていくことが、結果的に生きづらさを改善する重要な手立てとなるのだと思います。そのために、私たちが子どもにつけておかなければならない力が、今回の講演の中心テーマである「セルフアドボカシー」です。この力を発揮して、周囲からの「障害理解」と「合理的配慮」を引き出し、よい人間関係を築き、「共生社会」の実現に向けて進んでいきたいものです。(木島記)

 

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